ArakiLab.|金沢大学 人間社会学域人文学類 荒木友希子研究室

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2014/10/29

10月の学会発表

2014年10月は、事務局を担当している北陸心理学、そして初めての参加となった日本ポジティブサイコロジー医学会の2つで発表をおこないました。

北陸心理学会では、昨年度、指導教員を担当した第二著者の学生さんが卒業論文として提出されたデータを再分析して発表をおこないました。同じ大学に在籍する他者がタングラム課題をうまく解いている場面を動画で見た後、自分も同じようにうまく解けるのではないかと感じて課題固有の自己効力感が変化するかどうかを検討しました。その結果、もともと持っている特性的自己効力感の低かった人は、他者の成功を観察したことによって課題固有の自己効力感が上昇しましたが、特性的自己効力感の高かった人は課題固有の自己効力感に変化はなかったことが分かりました。自己効力感の低く、自分に自信がない人には、身近な存在の他者の成功経験を見たり聞いたりすることで、自分にもできるかも、と前向きになれるかもしれないことを示唆しています。毎年、心理学研究室の先輩方から有意義なコメントを頂戴し、いつもながら先輩の偉大さを感じました。

日本ポジティブサイコロジー医学会では、1週間ポジティブ日記を実施したことによって、感情や認知、ストレス反応に変化が生じるかどうかを検討しました。今回の実験では、統制群には感情を交えずに客観的事実としての行動観察の記録を1週間つけてもらいました。その結果、ポジティブ感情については両群とも変化がみられず、ネガティブ感情については介入群のみ低下していました。文章完成法の記述に関しても、介入群はポジティブな記述が増加していました。しかし、介入群・統制群とも、ストレス反応が全体的に低下しており、両群とも日記の効果が認められるという結果となりました。ポスター発表ではたくさんの方から貴重なコメントをいただき、あっという間のポスタービューイングの時間となりました。今後は統制群の設定について再考していきたいと思います。

また、今回初めて参加した学会でしたが、臨床現場で活躍されている医師が多く参加されており、実践場面においてポジティブ心理学は強く求められていることを感じました。私の研究には、精神科ではない他領域の医師から患者さんの心理的ケアの一環としてポジティブ日記を導入したいとの意見も寄せられ、関心の高さを肌で感じることができました。他大学の院に進学した卒業生とも久しぶりに会ってお話をすることができ、がんばっている様子を知ってとても嬉しく感じました。とても有意義な学会でした。

  • 荒木友希子・柳沢顕恵 2014    成功の代理体験が課題固有の自己効力感に及ぼす影響 北陸心理学会第49回大会発表論文集、64-65.
  • 荒木友希子・新井瑠夏 2014    ポジティブ日記によるポジティブ感情の生起がストレス反応および認知に与える影響 第3回日本ポジティブサイコロジー医学会学術集会プログラム抄録集,31.  ポジティブサイコロジー医学会ポスターPDF

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